別名併記/旧姓併記のパスポート

2021年4月からようやくパスポートに別名または旧姓を併記するための手続が簡単になったので、本記事はめでたく不要になったと思われる。だが、こんな時代もあったね~という記録のために、本記事はこのまま残しておこうかなと思っている。

外務省の報道発表を見ると旧姓を併記する場合は英語で「Former surname」との説明書きを加え、旧姓以外の別名についても所定の要件を満たせば併記が認められ「Alternative surname」などの説明書きを加える、とされている。だが、私のように旧姓を通称(屋号)として使用している場合でも、それがFormer surnameであることを説明書きとして加えなくてはいけないのかは不明である。私としてはできればAlternative surnameという説明書きにしたいと思っている。

なお、2021年5月8日現在外務省の「こんな時,パスポートQ&A」は長い間更新されていないようで、手続が変わったことさえわからない状態になっている、という残念な状況。東京都生活文化局のウェブサイトの「よくある質問コーナー」は一応ちゃんと更新されている。

まだまだ使い勝手の悪い制度ではあるが、少しは進歩したので、これからさらに夫婦別姓を認めるところまで進んで行ってくれたらよいと願うばかりである。

以下は、その、今となっては不要になってしまった情報である。

はじめに

2008年に埼玉県でパスポートを「切替」(=更新)したとき、初めて別名併記(旧姓併記)のものにしてもらったが、2018年3月にそのパスポートの期限が切れてしまったため、2018年6月に「新規」の申請を東京都でしてきた。

本記事はその申請に関してまとめたものである。

別名併記のパスポート取得のための申請や切替について調べている方の参考になれば幸いである。

別名併記/旧姓併記のパスポートを取得済の人が別名併記/旧姓併記のパスポートを新規に申請する場合

別名併記とは、パスポートの姓の欄に記載の姓の後ろに別名(「日常的に使用している外国人配偶者の姓や旧姓等」)を括弧書きで記載することをいう。この別名はパスポート内のICチップには記憶されない。

旧姓の併記に関し、東京都生活文化局のウェブサイトの「よくある質問コーナー」には「外国において旧姓で仕事をしその活動や実績が書面(招聘状、論文等)で確認できる方、又は職場で旧姓を使用し業務で渡航する方については、旧姓を別名併記(カッコ書き)することができます。」と書いてある。

10年前はこの旧姓併記だけのために大変苦労したことを覚えている。別名または旧姓を併記できることさえ知らなかった役所の人にまず説明をし、まるで論文のように長い事情説明書や証拠書類を含む分厚い書類を提出して、許可を待って、と色々手間がかかった。またあれを繰り返すのか、とか、(念のため10年前に役所経由で外務省に提出した書類のコピーは保存してあるが、それから仕事を変えたりもしているので書き換えなくてはならない部分も多々あり・・・)、今回は旧姓併記はあきらめようか、とか、考えていた。

でも、一度旧姓併記をあきらめると、いつか気が変わって旧姓併記を希望したときに証明手続が大変になるのではないかという心配もあった。

また、2019年より旧姓併記を誰でも選択できるようになるというニュースも見かけ、もしかしたら時代の変化により手続が以前よりも簡略化されているかも、という淡い期待もあり・・・。

東京都の問い合わせ先の電話案内センターに電話で聞いてみた。

すると、今持っているパスポートが旧姓併記のものであれば、たとえ期限切れであってもそれを持参すれば事情説明書等の書類の提出なしで旧姓併記が可能であるとのこと。

うわ~、世の中変わったのね、と驚くとともに喜んだ(いや、下記の通り、実はちょっと違ったみたいだが・・・)。

ネットで検索してみても確かに以前検索したときと比べれば、簡単な書類の提出で旧姓併記ができた、と記載されている経験談も多い気が。もしかしたら10年前だったから、というだけではなくてあのときは(前例が少ない)埼玉県だったから大変だったのかもしれないが・・・。さすがにあれから10年たって旧姓で仕事をしている人も増えているし、埼玉県も変わったのではないかと思う。特に働く女性人口が多い市区町村では話が通じやすいかもしれない。

実際に、東京都の旅券窓口でも(穴場と言われる(?)池袋の窓口だったが)すんなりと話が進み、本当に特別な書類の提出は不要だった。

そのときに窓口の人に聞いてみたところ、世の中が変わったから、ではなくて、所有する最新パスポートが旧姓併記のものであれば、新規(期限が切れたあとの申請)でも切替(期限内の申請)でも、旧姓併記は希望するだけで以前から可能とのことだった。そして、その方によれば、新規に旧姓併記を希望する場合は、依然として証明の手続は結構大変である(結局、世の中、大して変わっていない)とのことだった(ガクっ)。

新規に別名併記/旧姓併記のパスポートを希望する場合の手続

制度が変わり、もうこのような情報が不要になることを期待するが、2019年4月現在、東京都においてパスポートへの旧姓併記を新たに希望する場合に提出が必要な(1)事情説明書や(2)旧姓使用証明書は、東京都生活文化局のウェブサイトからダウンロードできる。

(1)は同ウェブサイトによれば「外国において旧姓で活動(研究者、通訳、記者等)している等の理由によりパスポートに旧姓併記を希望する場合に提出してください。」というものである。

(2)は同ウェブサイトによれば「勤務先で旧姓を使用し、かつ、業務渡航によりパスポートに旧姓併記が必要であることを雇用主等が証明する場合に提出してください。」というものである。

私が当時(前回パスポート切替時)埼玉県で旧姓併記を希望したときは、(2)を勤務先から提出してもらうのは難しかったので、(2)の代わりに、

海外から来た自分へのメールで宛名が旧姓になっているもののコピー、

旧姓が載っている論文や特許のコピー、

旧姓使用の社員証のコピー、

など、できる限り多くの仕事に関係する旧姓使用の証拠を(1)に添付して提出した。(1)には、パスポートに旧姓併記が必要な理由や業務上旧姓を使用することが自分にとって必須であることを詳細に説明した。

現在の東京都では、そこまでたくさん出したり書いたりする必要はないと思われるが(というか、(2)を勤務先に書いてもらえる人の場合、手続は簡単だと思われる!)、念のため、電話案内センターに必要となる書類を具体的に教えてもらうのが良いと思う。

ありがちな話だが、担当者によって経験値も理解度も異なるので、電話で聞くときには、担当者名も聞いておきメモしておくと後日書類に不備があると窓口で言われたときなどに話が進めやすくなると思う。

同ウェブサイトにも載っているように、電話案内センターの連絡先は下記の通り。

東京都パスポート電話案内センター 03-5908-0400

受付時間 月・火・水曜日 9:00~19:00、木・金・日曜日 9:00~17:00

私が旧姓併記のパスポートを希望した理由

旧姓併記を希望する理由は人により異なると思う。私の場合は(1)そもそも夫婦別姓の制度化を以前から強く望んでいる(その理由はここでは書ききれないのでまた別の機会に・・・)(2)仕事で旧姓を使用している(3)以前所有していた旧姓で署名済みのトラベラーズチェックをそのまま使いたかった(海外でトラベラーズチェックを使用するとパスポートの署名欄を見せてと言われることが多い)(4)旧姓で署名済みのクレジットカードを所有している(海外でクレジットカードを使用するとパスポートの署名欄を見せてと言われることが多い)、などが理由である。

つまり、新姓になっても旧姓の署名を旧姓併記パスポートには使用していた。

(3)についてはTC自体がもう使えないことに最近気づき(!)何年も取ってあったそれらがやっと換金できたので解決し(4)についても現在の姓で署名済みの別のクレジットカードも作ってしまったので一応解決してはいる。

よって、今回申請した旧姓併記の新しいパスポートの署名は戸籍上の姓のものにしてみた。

署名については、旧姓の署名(英語または日本語)、旧姓をミドルネームのように名と姓の間に書いた署名(英語または日本語)、など選択肢は色々あるので、自分にとっての利便性を(海外でも説明できる範囲内で)考えた上で選ぶ必要がある。

まとめ

今回あきらめずにだめもとで勇気を出して電話案内センターに聞いてみて本当に良かった。そして、こんなことで悩む必要のない、誰もが生涯自分の姓で生きられる日本に早くなってほしいと願っている。

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